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レジャー

   2017年2月24日

オリンピック選手の育て方


右側が今回の執筆者である橋本通代さん

右側が今回の執筆者である橋本通代さん

今回、tenki.jpチームは、2002年に開催されたソルトレイク五輪スノーボード女子ハーフパイプ日本代表橋本通代さんに、「オリンピック選手の育て方」についてコラムをご執筆いただきました。

オリンピック選手育成に王道はない。

「オリンピックに出るには、どうしたらいいですか?」ここまで単刀直入な方はいらっしゃいませんが、スノーボード選手からよく受ける質問です。

オリンピックまでの道のりは、意外とシンプルなので、各団体の説明から、順序なども、すぐにご案内できます。ここでも簡単にご説明すると、まずはオリンピックの窓口である全日本スキー連盟公認の各エリアにあるクラブに入会し、全日本大会などで定められた基準をクリアすれば、強化指定選手になることができます。そして世界大会出場の切符を手に入れた後は、世界大会で定められた基準をクリアし、更に様々な団体から承認された後、オリンピックに出場することができます。

このようにルートはシンプルですが、難しいのはどのようにアプローチするかですよね。ここで重要な力は、情報収集力とネットワークだと思います。どこで練習し、どの大会に出て、どのタイミングで海外に出るかなど、いい選択をするためには情報が必要で、情報収集のためにはネットワークが必要です。これはオリンピックに限らないと思いますが、絶対にかなえたい目標があるならば、とにかくがむしゃらに情報収集することが大事だと思います。

では技術的にはどうか。ここに関しては厳しいようですが、誰よりもうまい、日本一は当たり前です。世界大会で常に表彰台に立つことも当たり前です。そのための努力も当たり前です。人と違う目的があるのなら、人と違う努力が必要です。
2列目左から2番目が橋本通代さん

2列目左から2番目が橋本通代さん

自分がオリンピック選手になれた理由

数えきれないほどたくさんの方にお世話になってきましたが、やはり一番重要なキーは「自分」でした。私はだいぶと変わった子で、中学の頃、真剣に「自分探し」をしました。急に「本当の幸福って何だろう・・・」と思い始めたんです。来る日も来る日もその答えを考えました。そこでたどり着いた答えは、「人は一人一人違うから、幸福も違う。自分の幸福は自分の心が決める。だからまず、自分を知らないと。」と。

それがわかってからは、毎日とにかく自分を見つめ、自分を発見していくのが楽しくて仕方ありませんでした。好きなこと、嫌いなこと、得意なこと、苦手なことなど。それがわかると次は、自分だからできることを探したくなり、選択肢を増やすために、外の世界を見たくなりました。高校時代はバイトに熱中。大学生、社会人、たくさん人と話し、選択肢を増やしました。自分が何よりも大好きになれることは何か、夢中で探しているうちに出会ったのがスキーでした。そこからスキー、スノーボードとつながっていくのですが、今の私があるのは、中学の頃しっかり自分を見つめたことで、「自分」をよく知ったことがとても重要だったと思います。
大学時代はスキーに熱中。「スキーで有名になる」と決めて、大学卒業後お金を貯めて24歳の時にカナダ・ウィスラーへ。エクストリームの大会に出て一躍有名になることを夢見ていたのですが、ホームスティ先の人からスノーボードを薦めらたことや、いろんな理由が重なって、3日後にはスノーボードに転向。24歳から転向するのだから、有名になるだけでなく、世界に通用するスノーボーダーになることを目標にしてスタートしました。時間がない。だから順序どおりになんてできない。順番関係なしに、常に自分で選択して突き進みました。

できる限りの最短コースを行くために、もちろん情報収集は欠かしませんでした。夜のアルバイト中に欠かさず復習と予習。毎日の練習時間を効率よくするために、常にスノーボード日記を持ち歩きました。スノーボードを始めて3週間後にはハーフパイプやジャンプに挑戦、3か月後にはウィスラーの草大会に挑戦。プロに混ざって、3週連続3位になりました。

半年後の夏には撮影してもらう機会を得て、アップカマーとしてスノーボード専門誌に取り上げてもらい、その秋にショップを通じて、BURTON関西にサポートしてもらえることになりました。2年目はまずプロ資格を取得するために国内のベースとして白馬を選び、岩岳スノーボードスクールでスノーボードの基礎を一から教えていただき、全日本スキー連盟やオリンピックの情報をたくさん教えていただきました。岩岳2年目、スノーボード3年目、インストラクターとしてお手伝いさせていただきながら、どの大会に出るのが一番効率がよいかを教えていただき、シーズンで国内レースに4戦出場。4戦とも全て表彰台に乗ることができ、ナショナルチーム入りを果たしました。

最初から世界を目標にしていた私にとって、国内でトップになることは通過点であり、オリンピックに出ることも当たり前と思っていました。オリンピックに出ることが重要なのではなく、世界で勝つことが重要だと思っていました。かなり生意気で気の強いライダーだったと思いますが、本当にそう思っていました。
ただ、ここからが大変でした。スノーボード歴3年の私の前に立ちはだかった壁は、ワールドカップ転戦費用の問題でした。世界への夢をあきらめることも仕方ないと思える状況の中、地元寝屋川市(大阪府)の方が後援会を作って下さりました。雪のない寝屋川で、しかもスノーボード歴たった3年の私の夢をたくさんの方が応援して下さり、ワールドカップのスタート台に立つことができました。

まだ転戦費用が集まりきれていないまま11月になり、自分も必死でアルバイトをしながら、転戦費用集めにまわっていた頃、初めてお会いした社長が「あんたは1点だけを見つめている。1点を見つめている人は必ず成功する」そう言って寄付金を私の手にしっかりと乗せてくれました。その時の重みは一生忘れません。

ワールドカップ初参戦のシーズンでは表彰台2回、世界ランキング6位という成績を収めることができ、ナショナルチームA指定選手となり、その2年後にオリンピックに出場することができました。

宿泊型キッズスノーボード教室「キララキャンプ」

スノーボード6年目でオリンピックに出場した私は、急ぎすぎたせいか、燃え尽き症候群になってしまいました。心にパワーがないまま滑っている時に頚椎損傷の大けがをして、首の大手術を受けました。そして心も体もストップし、自宅で療養してすっかり元気になった時、次に見た夢が、昔から大好きであった子ども達と関わっていきたい。スノーボードを通じて、キラキラと輝く子どもを育てたいということでした。

オリンピックの翌年から宿泊型子どもスノーボード教室「キララキャンプ」をスタート。選手を育てるのではなく、スノーボードを教材に、子ども達一人一人をしっかりと見つめ、大好きなことに一生懸命に生きること、自分を生きる力を育てることを目標に様々な取り組みを行ってきました。子ども達の自発的な力を引き出すために、よい環境を作り、よい指導者に参加していただき、スノーボードの楽しさを全力で伝えた結果、想像以上に選手を目指すお子さんが増え、発表会する場が必要になったため大会を作り、オリンピックを目指すお子さんが増えたためクラブを作るなど、できる限りの育成の環境作りを行ってきました。そして15年。今では普及から強化までの取り組みを行なっており、卒業生から強化指定選手、日本代表、プロ多数を輩出するまでになりました。

オリンピック選手を育てるために、私たちが主に行っていることは、情報提供、ネットワークの提供、育てる環境作り。いい環境といい指導者がいれば、自然と子どもは育ちます。そして「育てること」に一番大事なことは、「見つめること」だと思います。見つめることで、その「人」が見え、必要な声かけ、手助けが見えてきます。

一人一人に適したチャレンジを提案し、成長できるようお手伝いをするのが私たちの仕事。「小さいチャレンジ」と「小さいできた」を積み重ねるうちに、自分の中から「頑張る力」が生まれていきます。スノーボードが大好きになった子ども達はそれを披露したくなります。きっとその延長線上にオリンピックがあります。

最後に

オリンピック選手になることよりもずっとずっと大事なこと、それは「自分を生きること」です。そしてスノーボードは、「自分を生きる力」を身につけるために、素晴らしい教材であると信じています。個性を良しとするスノーボードは、自分探しにぴったりです。人と人をヨコにつなげてくれるスノーボードは、ネットワークが広がり選択肢が増えます。

また乗るだけで楽しいスノーボードは、子ども達の心を開き育てる素晴らしい道具です。スノーボードに乗って、「自分」を発見し、大好きなことに一生懸命に取り組み、自らが輝くだけでなく、その輝きをまわりに注げるような人間に育ってほしい。今後もみんなとつながりながら、オリンピックに出ることをゴールとするのではなく、オリンピック出場後も更に輝いて生きていける、そんな一流の人間を育てていきたいです。
橋本通代 プロフィール
1972年7月6日生まれ。大阪府寝屋川市出身、四天王寺国際仏教大学卒業。ソルトレイク五輪スノーボード女子ハーフパイプ日本代表。キッズスノーボードキャンプ「キララキャンプ」を主宰するキッズスノーボード指導&育成のパイオニア。
2012年から家族で軽井沢に移住。軽井沢を拠点に、スノーボードを教材としたスノーボード育成を全国で展開。

主な実績と資格等

・ソルトレイク五輪スノーボードハーフパイプ日本代表
・JSBA公認プロ
・SAJ公認FISジャッジ
・日本Gボール協会公認インストラクター
・特定非営利活動法人CHILL理事
・四万十市観光大使

(2017年2月24日)


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