
手軽に火を使えて、非常時にも役立つカセットコンロ(コンロ)は、備えておくと便利なもの。だが、扱いには注意が必要だ。
未使用でも経年劣化していき、使い方によってはガス漏れや火災、一酸化炭素中毒といった、トラブルを招く恐れもあるという。
一般社団法人「日本ガス石油機器工業会」の岡本務さんに、事故を防ぐためのポイント、そして“やってはいけない使い方”を聞いた。
安全に使える目安は製造から10年
まず重要なのは、コンロを安全に使える目安は「製造から10年」であること。
コンロの内部には、カセットボンベ(ボンベ)の取り付け部がある。ここに「O(オー)リング」というゴム製の部品があり、経年劣化していくというのだ。
「Oリングの劣化が進むと、ガス漏れの危険性が高まります。ひび割れや変形が見られると事故のリスクも出てきます。保管状態にもよりますが、注意してください」
Oリングのひび割れや変形は目視できることもあるが、岡本さんが勧めるのは、本体の「製造年月日」を参考にすること。
本体側面に貼ってあるシールでチェックでき、製造から10年以上であれば、コンロごとの買い替えを検討してほしいという。
また、製造から10年以内でも、次の3点が見られると要注意だそう。
(1)コンロのガス通路周辺(ボンベの取り付け部から、火が出るバーナー付近まで)にさびや腐食が見られる
(2)ボンベがスムーズに取り付けられない
(3)ボンベをセットすると、ガス臭い
「目で確認しづらい部分がさびていることもあります。嫌なにおいがしたらガス漏れの可能性があるので、即座に使用を中止してください」
事故を招く“過熱状態”とNGな使い方
劣化していないコンロでも、使い方次第では、火災や事故が起きるリスクも。
岡本さんは「ボンベが“過熱状態”(熱くなりすぎること。危険な目安は40℃以上)にならないよう注意してほしい」 と話す。
コンロは誤った使い方をすると、他の調理器具からの熱、周囲の高温で、取り付けたボンベが異常に熱くなってしまうことがある。これが原因で、破裂や爆発が起きることもあるという。
事故につながる、NGな使い方は次の通りだ。
・IH調理器(電磁調理器)の上に乗せる
・コンロ全体を覆うほど、大きな調理器具を乗せる(大型の鉄板など)
・蓄熱性が高い調理器具を乗せる(セラミックが使われた、魚焼き器や焼き網など)
・コンロを2台以上並べ、大きな調理器具をまたがるように乗せる
・木炭や練炭の火おこしにコンロを使う
近年になって目立つというのが、IH調理器の上に乗せて事故が起きるケース。キッチンなどに設置されていることも多く、コンロを無意識に持って行ってしまうのだ。
「(コンロを使っているうちに)誤ってIH用調理器のスイッチが入り、気付かないまま過熱状態になるので、絶対に避けてください」
安全に使いたいなら「場所」に配慮を
また、使う際の場所選びにも注意が必要。
寒いと暖房機器のそばで温まりながら料理したくなるかもしれないが、これはNGだ。暖房機器とコンロの双方から熱が加わり、事故のリスクを高めてしまうとのこと。
使うのは「周囲に他の熱源がなくて、風通しが良い、平らな場所」が望ましいという。
閉め切った狭い空間での使用も避けたい。
「屋外であってもテントや車内といった、換気が難しい場所で使用すると、一酸化炭素中毒で死亡事故が起きることもあるため、絶対に避けてください」
なお、ボンベが過熱状態の場合はコンロの安全装置が作動し、自動で火が消えるともいう。ガスが残っているのにいきなり火が消えたなら、注意してみてほしい。
使ったら「正しいお手入れ」が大切
コンロによる事故を防ぎたいなら、使用後のお手入れも重要だ。本体の水分や塩分を残さないよう、使う度にきれいにしてほしいという。
「コンロは金属部品が使われているので、水分や塩分があると、さびやすくなります。使用後はタオルなどで水拭きして汚れを落とした後、乾拭きするのが基本です」
ただし、本体を丸ごと水洗いするのはNG。点火不良や故障の原因になるそうだ。
また、保管場所にも配慮が必要。湿気やホコリが付きにくく、温度の変化が小さい、室内で保管するのが望ましい。置き方は縦置き、横置き、どちらでもOKだという。
「庭の物置など、室外は基本的にNGです。さびやすく、ホコリもつきやすいですし、コンロに虫が巣を作ってしまうことも多いんです」
適切に保管しておいても、久しぶりに使う場合は、表面を丁寧に拭いてから使うのがベターだ。ホコリが残っていると、点火の際に引火するリスクがあるという。
「数カ月使う予定がない場合は、購入時の箱に入れて保管しておくと、ホコリも付着しにくく、長持ちにつながります」
寒い時期はコンロの出番も増えるはず。ルールを守った使い方、こまめなお手入れ、保管場所に留意したいところだ。