今が見ごろのチューリップ、 かつてオランダで巻き起こった「チューリップバブル」の悲劇とは?
2016年04月20日
世界的に有名なオランダの「キューケンホフ公園」
4月も半ばを過ぎ、日本では桜はすでに新緑に変わりつつある頃。
世界に目を向けると、この時期に見ごろを迎えるのがオランダのチューリップです。
世界最大のフラワーパークといわれるキューケンホフ公園を筆頭に広大な敷地に色とりどりのチューリップが咲き誇ります。
世界的にも人気の高いオランダのチューリップ。ですが、世界初のバブル経済を巻き起こしたのが、何とオランダのチューリップというから驚きです。一体、かつてのオランダでは何が起こっていたのでしょうか?
オランダの土壌に相性ぴったりだったチューリップ
チューリップ畑の近くでよく見かける風車
オランダの国花に定められているチューリップですが、実は原産国はトルコ。16世紀後半にオランダに持ち込まれたといわれています。
オランダは風車が立ち並ぶ風景からもわかるように、水が豊富で湿気が多い土壌です。
さらに、涼しげな春の気候も相まって、チューリップを育てるのにとても適した条件だったのです。
当時、チューリップを手にすることができたのは王族や貴族など上流階級のみ。
まさにチューリップは「高嶺の花」。
それでも、チューリップの栽培に適したオランダでは、園芸家を中心に新しい品種の開発などが進み、どんどん人気の花となっていきました。
オランダを襲った悲劇「チューリップバブル」
オランダは美しい国ですね
上流階級だけの楽しみだったはずのチューリップですが、その人気は一般市民にも広まっていきました。
市民の間でもチューリップ栽培に手をつける人が増え、いろいろな種類の交配が進みましたが、珍しいチューリップが現れると価格が急騰したのです。
モノによっては通常の価格の10倍ほどに膨れ上がるものも出てきました。
チューリップの価格高騰により、球根一つで家が買えるほどのお金になったり、珍しいチューリップの交配に躍起になり徹夜で庭を監視する人も現れたり……と異常事態となりました。
しかしある日、チューリップの価格が暴落。買い手が見つからない人が続出し、大パニックに……。
これが17世紀のオランダを襲った悲劇「チューリップバブル」です。
近代三代バブルの一つともいわれるほど、劇的な暴落を見せた経済事件だったのです。
オランダ人にとって大事なのは「花」より「球根」
栄養ある球根を出荷できるかがポイント
「花より団子」ならぬ「花より球根」。
チューリップバブルはオランダ政府によって沈静化されましたが、「チューリップは商品」という意識は、その時代に根づいたのでしょう。
短い命である花を売るのではなく、球根を売るためのシステムが確立されているのです。
栄養のある球根を取り出すには、チューリップの花が咲いたらすぐに花を刈り取らなければなりません。花のほうに栄養が持っていかれてしまうからです。
美しいチューリップを見るために世界中から春のオランダへたくさんの人々が訪れますが、ある場所では花だけが刈り取られた緑のチューリップ畑も存在することでしょう。
── それでも、キューケンホフ公園など観光客に人気のチューリップ畑が広がるオランダ。
ベストシーズンに一度は訪れてみたいものですね。