沖縄の伝統行事「清明祭」。墓前で重箱を広げ、豪華料理を楽しむお祭りとは?
2015年04月12日
石垣島に実在する豪華な唐人墓。「清明祭」はこうした墓前で賑やかに行われる伝統行事
春の訪れとともに雪解けを待っていた植物が芽を出す季節となりました。
一年を24に分けた期間を表す二十四節気では4月5日頃を“清明”と呼びます。
清明とは「すべてのものが清らかで生き生きとするころ」(※)と言われています。
この清明の季節にちなんで、沖縄では「清明祭」という伝統行事があるのをご存じですか? 先祖を供養する「お盆」のような行事ですが、見慣れない人にとってはちょっと不思議な光景かも……。
沖縄独特の文化「清明祭」とは、一体どんな祭りなのでしょうか?
中国から伝わった清明祭
「清明祭」は元々、中国の祭りで18世紀に首里王朝があった時代に沖縄に伝わったとされています。沖縄の方言では清明は「シーミー」と発音されます。
二十四節気の清明が終わると雨が多くなるので、雨の量が増える前に先祖のお墓をきれいにしたり、お供え物をあげたり……という伝統が中国には存在していました。一年間、雨風にさらされたお墓をきれいにするのには最も適した季節ということなのでしょう。
清明祭は何をやるの?
この中国の伝統的行事は沖縄に伝わり、沖縄ならではの文化と相まって独自の祭りとなり浸透していきました。清明の時期には、親戚一同が先祖の墓前に集まります。お線香やお花を供えるのは、ごく普通の墓参りと同じですが、清明祭では“重箱”をお供えするのです。
さらに、重箱を一度お供えした後は、親戚一同でその重箱料理をごちそうになるというので驚き! まるでピクニックのような雰囲気ですが、親族の結束を深める意味合いもあるようです。
気になる重箱の中身
気になるのは重箱の中身ですが、好きなものを入れているわけではないんです。清明祭でお供えする重箱は餅重が2箱、料理が2箱で1セットという決まりがあります。
料理はカステラ、かまぼこ、揚げ豆腐、天ぷら、田芋、昆布、ごぼう、こんにゃく、皮つきの三枚肉が基本。この9種類の料理が、重箱の中にきれいに9等分に並べられます。
また、餅重の餅の数は9個か15個が基本とされています。料理の中身にしろ、餅の数にしろ、いずれも縁起がよいという理由があるのです。お供え物にも、それぞれ意味が込められているのですね。
沖縄の墓は小さいおうち?
それにしても、そんなにお墓の前でたくさん人が集まって大丈夫なの?と思う方もいるでしょう。実は、沖縄の墓は独特の形をしているのです。小さな家のような形をしたお墓が沖縄には数多く見られます。骨壷が大きいこと、一族全員が同じ墓に入る伝統があることなどから大きな墓を作るようになったとか。
本州でよく見かける墓では、親戚一同が集まって重箱を広げられるようなスペースはありませんが、沖縄ならではの大きなお墓だからこそ、この行事が成り立っています。
先祖を祀るといえば夏の「お盆」が一般的ではありますが、「清明」という季節も沖縄の人々にとっては、とても大切な季節です。地方ならではの伝統がこれからも受け継がれるといいですね。
参考資料
(※)『日本の七十二候を楽しむ-旧暦のある暮らしより-』著:白井明大より引用
「沖縄観光情報WEBサイト おきなわ物語」「いーもとぶ.net」(ともにリンク先参照)