トップ > tenki.jpサプリ > サイエンス > 記事概要 > 七十二候<寒蝉鳴(ひぐらしなく)>。セミのうたを聴き分けてみませんか?(2017年8月12日)

サイエンス

   2017年8月12日

七十二候<寒蝉鳴(ひぐらしなく)>。セミのうたを聴き分けてみませんか?


晩夏の挽歌

晩夏の挽歌

秋を告げる寒蝉(ひぐらし)が鳴く時季です。「セミが怖い」という人は、じつはけっこう多いようです。そのおもな理由は、セミのもつ破壊力!? 虫としての大きさを完全に無視した大音量によって人の脳みそは掻き乱され、去り際にオシッコをかけられ、蝉爆弾でビックリさせられる! ミーン、ジー、シャ〜、ツクツク…等々いろいろ聞こえてきますが、いったいどれが「寒蝉」の声なのでしょうか? 生涯最後の夏を、お腹の底から歌い競うセミたち。耳で感じる夏の終わりのお話です。

お腹から声出してます。スピーカー機能内臓!

セミは鳴いているとき、お腹をモコモコ動かしています。「腹から声出せ〜!」などと人間も叱咤激励されたりしますが、セミはどうやら本当にお腹から声を出しているようです。思えば、幼虫として何年ものあいだ暗い土の下に潜伏し、満を持して地上に出て婚活している身(しかも残り時間わずか!)。中途半端な気持ちじゃ夏を過ごせませんね。とはいえ、小さな虫の体で、どうやってあんな大声を? 気合いだけで、あの破壊的なボリュームが出せるものなのでしょうか?

鳴くのは、オスだけ。背中の内側には左右に膜(発音膜)があり、貝柱のような強い筋肉(発音筋)につながっています。発音筋がちぢむと、発音膜が引っぱられて、音が出ます。発音膜は1秒間に約100回も伸びちぢみし、そのたびに音が出るのです。薄い金属板を凹ませるとペコン、と鳴るのと同じ仕組みなので、ためしに死んだセミの発音膜をピンセットでつまんで引っぱってみても、ちゃんと音が出るのだそうです。逆に、元気なセミでも、両側の発音膜に虫ピンでちょっと穴を空けると、とたんに歌えなくなってしまいます。

オスのセミを仰向けにすると、後ろ肢の付け根(胸の下方)あたりに、うろこのような固い板が2枚。めくってみると、その下にはぽっかりと大きな穴が! セミはなんと、この空っぽのお腹に音を反響させて大きくしていたのです。昆虫学者ファーブル先生の実験によると、空っぽになっている部分をハサミで切り落として指でふさいでみると、元気なセミはそれでもよく鳴きますが、低く、太い声になるのだとか…。また、その穴に紙の筒をラッパのようにしてあててみると、声はより大きく、より低くなるのだそうです。さらに、その紙の筒をガラス管に突っ込んでみたところ、まるで牛か怪物のうなり声に!? セミの「虫ばなれ」した大声は、お腹の拡声器によるものだったのですね。
樹の汁が大好き。丈夫なストローで吸います

樹の汁が大好き。丈夫なストローで吸います

夏の終わりに鳴く「寒蝉」は、ヒグラシではない?

セミは種類によって、声だけでなく、鳴く時期や時間帯もちがいます。夏のはじめにはまず、ニイニイゼミが「チィー」と鳴きはじめ、梅雨が明けるとヒグラシが「カナカナカナ」と鳴き出します。…あら? ヒグラシって、じつはそんな早いうちからすでに鳴いていたのですね! 「ギ〜ジリジリジリ」と、揚げ物をしているような声を出すのは、アブラゼミ。人間が鼻をつまんで「ミーンミンミン」と真似したくなるのはミンミンゼミ。体の大きいクマゼミは、声も「シャンシャンシャン」と大きくて、おもに関東より南にいます。そして夏休みが終わるのを名残惜しく感じる頃、「オーシ〜、ツクツク」と歌うツクツクボウシ(そのため、寒蝉鳴の「ひぐらし」とはツクツクボウシを指すのではないか、という説もあります)。よく聞こえてくるあの声は、なんのセミ? 「関連リンク」で鳴き声とセミの種類を確かめることができますよ〜!

耳鳴りの一種に「セミの鳴き声が聞こえて夜眠れない」という症状がありますが、実際に夜鳴きするセミも増えているのだそうです。セミがもっともよく鳴くのは25℃前後。近年は熱帯夜が多いことや、夜も街灯で明るいことなどが夜鳴きの一因と考えられています。じつは、セミには夜寝る習性はなく、ただおとなしくしているだけなんだそうです。また、飛べない雨の日も鳴きません。たいていのセミは、お日さまが好きなのですね。

そんななか、ヒグラシは朝早くまだ暗いうちか、夕暮れに鳴きます。日中でも、雨が降りそうに暗くなり、気温が下がると「カナカナカナ」と涼しい声で鳴きはじめるのです。まるで夏の中の秋を感じとって鳴いているみたいに。そういえば、ちょっと秋の虫が翅から出す音を思わせる、澄んだ響き…セミの声で暑さが癒されるなんて。「鳴き声に秋風を思い出す」不思議なセミを、昔の人は「寒蝉」と呼んだのかもしれませんね。
つくづく惜〜しい、夏休み!

つくづく惜〜しい、夏休み!

自分の耳は平気なの!? 蝉爆弾を回避する方法は…

ところで、セミの耳は発声器のすぐ近く(つまり左右のお腹の内側)についています。自分でうるさくないのでしょうか…。『ファーブル昆虫記』には、歌っている木の下で大砲を撃ってみても、セミは平気で歌っていた、とあります。鳴いている木に人が近づくと、セミはすぐ逃げてしまいますが、木の裏側にまわって手をパンパン叩いたりしても、セミは平気で歌い続けます。小鳥なら、どんなに足音を忍ばせても飛んでいってしまうのに。じつは、セミには眼が5つもあり、そのかわり耳はあまり聞こえないのでは、ともいわれています。けれど、そもそも歌う目的は、婚活アピールだったのでは!? 相手のメスも聞こえなかったら、元も子もないはずですよね。それとも、ミュージシャンの難聴のように、オスだけ耳が遠いという可能性も…?

詳しいことはわかりませんが、メスはやはり、どんな喧騒のなかでもちゃんと歌を聞き分けて、魅力的なオスを選んでいるようです。聞き取る音の範囲が人間とは違うのかもしれません。または、「耳が遠いはずなのに、悪口を言うとなぜか全部聞こえている」ように、生きものの耳は、瞬時に聞くべき音だけを選んで脳に伝えているということでしょうか。

夏の終わりには、落ちてひっくり返っているセミをよく見かけます。「蝉爆弾」とは、死んでいると思って近づいたとたん、いきなり大暴れするセミのこと。大声で鳴きながら顔にぶつかられ、心の傷になっている方もいらっしゃることでしょう。遠くから手をパンパン叩いても反応しないかもしれません。そんなときは、肢(あし)に注目です。きゅっと閉じていたら、たぶんそれはセミの亡骸。でも、ぱぁ〜と開いていたら要注意! 水鉄砲(←セミは濡れるのが苦手なので有効という噂も)などを所持していない場合は、速やかにその道を迂回してください!(住んでいる建物の入口付近にいたら、うちに帰れませんが!)…とはいえ。セミとしては「もう枝につかまるのも平らな床で寝返りを打つのも、しんどいんだけど最後の気力をふりしぼって飛ぶっ!!」という状況なので…コントロールがきかないのは、大目に見てあげたいですね。
クマゼミ。肩のあたりがクマっぽいですね

クマゼミ。肩のあたりがクマっぽいですね

地上の寿命は一週間として知られているセミですが、実際にはもう少し長くて、ひと月くらいとのこと。その生きている数週間にも、寒さに向かってゆく季節の変化を感じとり鳴いているのでしょうか。人に秋を告げながら、寒蝉が秋を知ることはありません。


<参考文献>
『ファーブル昆虫記3』奥本大三郎/訳・解説(集英社)
『鳴く虫の科学』高嶋清明、海野和男(誠文堂新光社)
ミンミンゼミ。セミはハート形になって交尾しますよ♡

ミンミンゼミ。セミはハート形になって交尾しますよ♡

(2017年8月12日)


日直予報士最新の5件

23日16時発表の星空指数

オリオン座流星群 ピーク後もチャンス

10月23日 18時40分

オリオン座流星群のピークは21日(土)と過ぎてしまったものの、まだ見られるチャンスがあります。台風が去った日本列島はこの先しばらく晴れる所が...

南に熱帯低気圧 次の「台風」発生か

10月23日 16時34分

台風21号は温帯低気圧に変わりましたが、日本のはるか南には、別の台風のたまごである熱帯低気圧があります。

台風21号は温帯低気圧に変わりました

10月23日 16時8分

きょう23日午後3時、台風21号は北海道の東で温帯低気圧に変わりました。
北海道における警戒・注意点

北海道 台風第21号に注意・警戒を

10月23日 14時56分

台風第21号は本日午前3時頃に超大型で強い勢力を保ったまま、静岡県の御前崎市付近に上陸しました。午後1時過ぎには襟裳岬の南海上に進み、今夜に...

関東 台風一過の青空で夏日も 風強い

10月23日 14時6分

きょう23日、お昼の関東地方は広く晴れて、気温は25度を超えている所があります。風の強い状態は夕方まで続くでしょう。沿岸部は高波に警戒を。日...

今日の天気(全国)

23日22:00発表

全国のコンテンツ

iPhoneアプリ App Storeからダウンロード
推奨環境:iOS8.0以降
iPadアプリ App Storeからダウンロード
推奨環境:iOS8.0以降
Androidアプリ Google playからダウンロード
推奨環境:Android4.4以上

このページの先頭へ