子どもにとっては年に1度の大イベント!函館の 「ロウソクもらい」は七夕の伝承行事
2015年07月07日
勝手にドアを開けて歌う!走る!夜まで友だちと出歩いて良い「特別な日」
子どもたちは、知らない家の玄関でも、チャイムをならすことなくドアを開け、玄関先で「たけ~に たんざく たなばたまつり おおいに いわおう ローソク いっぽん ちょうだいな」と、一本的に声をはりあげて歌います。訪問された家の人は、歌声が聞こえると玄関に出てきて、子どもにお菓子を渡します。「ありがとうございます!」とお礼を言うやいなや、次の家を目指してダッシュする子どもたち。限られた時間内になるべく多くの家をまわろうとする子どもたちは、約2時間半を歌っては走り、走っては歌い、体力の限界まで頑張ります。
この楽しい行事に参加するのは、原則として小学生まで。函館の私立中学校に道外から入学した1年生や、大学に留学に来ている学生なども、函館の文化・風習を体験する機会として参加することもありますが、函館で育った中学生以上の子どもは卒業です。
残念ながら、小学校ルールは市民に伝わっていない・・・
近年、小学校では、「笹かざり」がしてある家だけを訪問する、お菓子を貰ったらお礼を言う、校区外には行かない、低学年は大人と一緒にまわる、高学年でも3人以上一緒にまわる、現金は貰わない、まわる時間は5時半から8時まで、などのルールを守るように指導しています。
小学生は「笹かざり」を外に出してある家だけを訪問するので、居留守を使わなくても訪問されることはないのですが、残念ながら小学生が身近にいないご家庭には、そのルールが伝わっていません。子どもの訪問を楽しみにしているお年寄り世帯でも、笹かざりを用意していることは滅多になく、子どもたちは素通りしてしまいます。門や玄関のドアを開け放してある家を見つけると、「行ってもいいのかな?でも、笹かざりがないし・・・」と子どもたちは迷ってしまいます。なかなか子どもが歌いに来てくれないので、待ちきれなくなったお年寄りが玄関の外に立ち、「お菓子あるよ!」と呼び込みをしている姿も。「市内の小学校では、このようなルールを守るように子どもたちに指導しています」ということを、もっと周知できればいいのですが・・・
「ロウソクもらい」は「青森ねぶた」が原点
函館の「ロウソクもらい」も、時代とともに変化しています。かつては、本当にロウソクを渡していたのですが、いつの時代からかロウソクと一緒に飴などのお菓子を渡すことが多くなり、現在ではお菓子やオモチャがほとんどで、ロウソクを用意している家庭は滅多にありません。歌詞も、「おおいや いやよ」だったのが、「おおいに いわおう」に変わっています。
実は、北海道では、函館以外にも似たような行事が残っている地域があり、それぞれ異なる歌詞が伝わっています。「ローソク 出ーせー 出さないと かっちゃくぞー」という歌詞の地域も。「かっちゃく」とは「ひっかく」の意。仮装こそしませんが、”trick or treat”(お菓子をくれないといたずらするぞ)」と家々をまわるHalloweenによく似ていますね。
あ、このおばあちゃん、見たことある!
参考文献:
『函館歴史文化観光検定公式テキストブック 2012改訂版』 2012 函館商工会議所
飯野まき 『ロウソク いっぽん ちょうだいな』 月刊予約絵本「こどものとも」通巻第712号 2015 福音館書店