日本に初めてオペラが伝えられたのは1894年11月24日。1894年は明治27年になります。
現在の東京芸術大学にあたる場所で、1894年11月24日にオーストリア、ハンガリーの大使館職員によって『ファウスト』の第1幕が上演されました。そして、1903(明治36)年には、初めて日本人が『オルフェウス』という演目でオペラを演じることに。こうした流れを汲んで、じわじわと日本人の間にもオペラ人気は広まっていき、1911(明治44)年には、帝国劇場で歌劇部が設立される運びとなります。そしてこの時点で、すでに日本オリジナルのオペラができあがっていたそうです。
さらに驚くべき点は、昭和に入って間もない時代に、ヨーロッパで活躍する日本人オペラ歌手がいたということ。それは藤原義江という男性テノールの歌手だったのですが、藤原はすでにこの当時から海外で活躍していた実績をもつ人でもあったのです。
そんな藤原が1932(昭和7)年に日本に帰国してからは、現在の『藤原歌劇団』という日本初のオペラ・カンパニーを創設します。そして1997(平成9年)年には、日本初のオペラ専用劇場
「新国立劇場」が誕生することとなります。
着実に日本でもオペラ人気が広まっていったように思えますが、日本でオペラが浸透するまでにはいくつもの紆余曲折がありました。その理由のひとつが、ヨーロッパの言語と日本語の言語の性質の違いと言われており、歌が中心のオペラは、どのように訳したとしても日本語では無理がある……という意見があったからです。それでも長きにわたり日本でオペラが上演されている理由は、やはりオペラそのものに大きな魅力があるからに違いありません。