こうして暑い夏ごろ、稲は花穂をつけ、開花します。この出穂から開花期は特に多くの水を必要とし、圃場の水を絶やしてはいけません。これを「花水」といいます。寒冷地では、花穂が現れる一週間ほど前の「穂ばらみ期」は、時にやってくる冷害に備えて、幼穂が水中に浸水するように水を深くしておきます。
そして、出穂以降はふたたび間断灌漑に戻し、根や生体全体の活力を維持し、大粒の実が実るように適切な水と空気を与えるようにします。温暖地では、熱による害や乾燥を防ぐために、水を掛け流しにして地温を下げたりもします。
こうして出穂後、一ヶ月弱を目安に、いわゆる落水をします。この落水を、俗説では「水始涸」であるとしているようです。
水田と言うと、田植えからずっと変わらずただ水がためてあるように思われがちですが、実はこのようなこまめな管理をおこなって、ようやくたわわな稲穂が実っていたわけです。
稲作にはこの他に防除虫や、雑草取り、病害対策、台風、洪水、竜巻などのアクシデントへの対応を乗り越えながら、ようやく刈り取り作業へとたどり着きます。
お米だけではなく、蕎麦やサツマイモ、落花生などが旬を迎え、レンコンやサトイモも収穫されはじめる10月。それぞれに収穫までには数々の苦労があることでしょう。感謝して実りの秋を楽しみたいものですね。
淮南子