ところで、同じ水鳥ということでガンとカモとは多くの人にはどこがどう、と区別がつきにくいのではないでしょうか。また、ガン類の中でも大型のヒシクイなどは、顔の形やスタイルなどがハクチョウに近く、やはり明確な違いがわかりにくいかと思います。
簡単に言うと、ガンもカモもハクチョウもカモ目カモ科に属する同じ仲間です。小型のものをカモ、より大型のものをガン、さらに大型で総じて羽が白いものをハクチョウと呼びます。
特にわかりにくいのはアヒルと白いガチョウでしょうか。ピータンを作るアヒルは鴨を家畜化したもの(さらに合鴨はアヒルとマガモをかけあわせたもの)、フォアグラで知られるガチョウはガンを家畜化したものです。スタイルも、アヒルはずんぐりしていて小柄、ガチョウは首も足も長めですらっとしていると覚えておくといいでしょう。
もちろん他にもさまざまな違いもあります。まずハクチョウ類はガンカモよりも脊柱骨が多く首が長い、体が大きい分水面から直接飛び立てず、助走を必要とします。
食性も違います。ハクチョウやガンはかなり強い植物食で、藻や水草、草や木の実・穀物などが主食です。ガンは特に嘴や舌に鋭いぎざぎざがあり、繊維質の強いイネ科の草なども難なく噛み切って食べてしまいます。一方カモは雑食性で、植物も食べますが昆虫や無脊椎動物などが大好物。そこで合鴨農法などで田んぼの害虫や柔らかい雑草を食べさせるわけですね。
そして、カモ類はペアを頻繁に入れ替える習性がありますが、ハクチョウやガンはつがいを形成すると終生添い遂げる性質があります。夫婦や仲間の絆も深く、渡りの際、誰かが傷ついてわたれなくなると、仲間につきそいそのまま渡りを中断した例が観察されています。中には、一度飛び立ったのに、気になって戻ってきた例もあるとか。
このように細やかでやさしい情をもつガンが、古くから日本人の情緒に訴え、好まれたことも当然かもしれませんね。宮沢賢治の「雁の童子」という不思議な童話では、雁は天神の化身として描かれています。
日本を去っていったガンたちは、秋の終わりごろにまた戻ってきます。その夏に生まれた子どもたちを伴って。まだ若い個体は嘴がやや黒っぽく、お腹のまだら模様がほとんどなく白っぽいお腹をしていますからすぐわかりますよ。
(参考サイト)
環境省・渡り鳥の飛来状況ガンカモ類都道府県別種別集計数シジュウカラガン 飛来数最多2677羽雁の里親友の会・希少ガン類の復元計画