ふたたび現代の話。外国の野良猫・地域猫たちと比べて、日本の外猫たちの大半がひどく人に警戒心を持っているように見えます。それだけいじめられる機会、こわい思いをすることも多いのでしょうか。野良猫の「被害」を訴える声は多く、自治体が野良猫へのいわゆる通称「餌やり禁止条例」(実際には、「餌をやってはいけない」という条例は上位法に反するので制定できません。あくまで「むやみに餌をやり、住環境を汚すなどの行為の禁止」です)を制定したりなど、トラブルも増加の一途。
保健所に持ち込まれ、殺処分されるネコの数は平成27年度の統計では全国で約67000頭に及びます(環境省発表)。
2014年度のペットショップのネコの流通数は13万頭といわれていますから、それに近い数のネコが年間に買い取られていることになります。ネコを飼いたい、飼えるという家庭が、もし里親からの引き取り、野良猫の引き取りを行っていれば、野良猫の数も殺処分されるネコの数も必然的に減ることになります。
ともすると、「野良猫に餌付けをする者が悪い」という言い分が大きくなりがちですが、地域猫活動で猫の一時捕獲→ワクチン注射や避妊手術を、猫の安全も考慮して実行するためには、前段階としての餌付けは必要な行為です。もちろん人間の生活との妥協点を見出すことは必要ですし、糞尿の被害に困る気持ちもわかりますが、一方で猫が出歩くことで野ネズミやモグラを捕獲し、野鳥を追い払って畑や庭木の食害を守ってもいます。
ネコの食べのこしの餌が問題だ、といっても、実際には人間たちが排出するごみのほうがずっと多いわけで、それだけを目の敵にするよりも、地域住民で町の美化に勤めるほうが建設的でしょう。「餌をやるから野良猫がいる」のではなく「捨て猫をする人がいるから野良猫がいる」のです。
現在、全国でネコの里親制度が動物病院や自治体、ネコ愛好の市民団体とで連携して形成され、里親への譲渡会が催されています。日本でも今後、諸外国と同様、里親制度でネコを求めることが常識となっていってほしいものです。
近頃、筆者のすぐ近所にもネコカフェがオープンしました。香川県の伊吹島・佐柳島、宮城県の田代島、愛媛県の青島など、有名な「猫島」などの「辺鄙な」島がネコのおかげで人気の観光地となり、東京都の谷中や神楽坂、広島の尾道などでは地域猫が町のアイコンに。地域猫たちが人を癒す力は絶大です。
ネコの周囲には、不思議と穏やかな空気が流れます。発情期など特殊な時期をのぞき、ネコが日々平穏をむねに過ごしているからでしょう。ネコは相手に多くを求めず、自由を尊重します。それでいて、全身をあずけて甘えることもできる。人が及びもつかないしなやかさは、その体の柔軟性だけではなく、心のありようも同様だと思えてなりません。
(参考)
公益財団法人動物環境・福祉協会Eva駆除目的で捕獲した猫の引取りについて全国アンケート伝説の生物「ヤマピカリャー」? 西表で目撃相次ぐ2007年12月27日